『翻訳って、英語ができれば誰でもできるんでしょ?』
『帰国子女とか留学組が超有利なんですか?』
実は、この質問、本当によく聞かれます。
SNSでも「TOEIC900点あれば翻訳者になれる」とか「英語ペラペラなら余裕」という投稿を見かけることがありますが、これ…半分は正解で、半分は大きな誤解です。
結論から言うと、翻訳に英語力は必須だけど、それだけでは仕事にならないんです。
翻訳の世界に足を踏み入れたばかりの人には、「英語さえできれば何とかなる!」と考えている人がよく見かけられます
ところが、実際に訳してみると全然スムーズにいかない…。 「え、これ日本語にしたら変な文章になっちゃう…」 「原文の意味は分かるのに、伝わる日本語にできない…」ということが頻繁に起こるわけですね。
そう、翻訳の難しさは“英語の理解”よりも、その先にある“文章化”や“意味の汲み取り”にあるんです。
そこで今回は、これから翻訳者を目指す方に向けて、 英語力だけじゃ足りない!翻訳者に必要な3つのスキルを、実体験も交えてご紹介します。
英語力だけじゃなく「日本語力」が超重要
翻訳者と聞くと「英語ができる人」というイメージが強いですが、実は日本語力こそが翻訳の仕上がりを左右します。 なぜなら、翻訳のゴールは“原文を理解すること”ではなく、“読み手にとって自然で正確な日本語にすること”だからです。
例えば、こんな英文があったとします。
The meeting was put off due to unforeseen circumstances.
これを直訳すると「その会議は予期しない事情により延期された」となりますね。ですが、これだとちょっと不自然というより読みづらい。「予期しない事情」よりも「思わぬ事情」や「予期せぬ事情」の方が読みやすいですよね。
こういう細かな言い回しの選択は、日本語の語感や文法、リズムの理解が不可欠。 英語力が高くても、日本語が不自然だとプロの現場では通用しません。
ポイント
- 文法・語彙だけでなく、日本語の美しい言い回しを日頃から意識する
- 新聞や本を読み、文章表現の引き出しを増やす
- 「直訳」ではなく「意訳」の感覚を磨く
文脈を読む「読解力」
翻訳はただ文法通りに単語を置き換えるだけではありません。
原文の中には「行間」や「暗黙の前提」があり、それを読み取るのが「読解力」です。
例えば、ビジネスメールにこんな一文があったとしましょう。
We might need to reconsider the schedule.
直訳すれば「私たちはスケジュールを再検討する必要があるかもしれません」です。
でも、文脈によっては「スケジュールを見直す必要がありそうです」というやや強めのニュアンスや、「スケジュール変更も視野に入れるべきです」という提案寄りのニュアンスにもなります。
このニュアンスを間違えると、相手に誤解を与えてしまうこともあります。
また、特に契約書や特許のような精密な文書では、一語一句の解釈ミスが命取りになります。くわえて契約交渉などのやりとりではお互いシビアに見ていますから、問題になることもありえますよね。
ただ訳せばいいのではなく、背景を理解した上で訳すのが翻訳者の仕事です。
読解力を伸ばすための習慣
- 日頃から英語だけでなく日本語の論理的な文章にも触れる
- ニュース記事や論文を読んで、背景知識を増やす
- 「誰が」「何を」「なぜ」しているのかを常に意識して読む
調査力(リサーチスキル)
翻訳の現場では「分からない言葉」「初めて見る専門用語」が毎日のように出てきます。 ここで必要なのが調査力です。
例えば、 “protocol” という単語が出てきた場合。 辞書で引けば「外交儀礼、儀典、礼儀作法」などが載っていますが、ほかにも様々な意味があるため文脈によって訳し方を変える必要があります。 「協定」「手順」などの意味もありますし、IT分野ではそのまま「プロトコル」という片仮名語が使われます。ですので、正確に訳すには背景をきちんと調べないといけません。
調査力は、単なる検索能力ではなく、信頼できる情報源を見極め、最適な訳語を選ぶ力のこと。
誤った情報を引用してしまうと、訳文全体の信頼性が崩れてしまいます。
調査力を鍛えるコツ
- 一次情報(公式文書、専門書、学術論文)を優先する
- 辞書は複数使い、用例や文脈を確認する
- Google検索だけでなく、専門分野のデータベースも活用する
英語力だけじゃダメな理由、もうお分かりですよね?
翻訳の現場で求められるのは、
- 英語力
- 日本語力
- 読解力
- 調査力
…と、最低でもこの4つ(今回は3つにまとめましたが)です。
英語が得意でも、日本語が不自然だったり、調査が甘かったりすると、クライアントからの信頼は得られません。
むしろ、翻訳業界で長く活躍している方の多くは「英語力は仕事をするうちに伸びた」と口を揃えます。
それよりも、日本語の表現力・文脈の理解・調べる習慣を意識的に磨くことが、プロへの近道なんです。
まとめ
- 英語力は大事。でも、それだけではプロ翻訳者になれない
- 日本語力、読解力、調査力の3つがそろって初めて「仕事になる訳文」が作れる
- 英語力に自信がなくても、翻訳に必要なスキルは後から鍛えられる
- 日々のインプットと実践で、確実に成長できる
もし今「英語力にまだ不安がある…」と思っていても、大丈夫です。 翻訳は、やればやるほど、確実にスキルが積み上がる世界。 小さな一歩でも積み重ねていけば、その先にプロとして活躍できる未来があります。