翻訳者の道:独学で挑戦する人が陥りがちな3つの落とし穴とは

先日、運営事務局から「独学vsスクール」についての記事が出ていました。

おそらく、翻訳者を目指している人の何割かは、「翻訳者って、自宅で一人で仕事してるイメージあるし…独学でも目指せるんじゃないかな?」、あるいは「スクールに通う時間もお金もないから、ネットと書籍で勉強して、翻訳者になれたらいいなあ…」と考えているのではないでしょうか。

実際にときどき、私のところに、「講座を受けなければ翻訳者にはなれませんか?」という質問メールが届きます。

また、私自身も最初は、書店で買った書籍を使って独学していました。

ですので、「独学で翻訳の仕事ができるようになりたい」と考えている人は、一定数いるものと思います。

運営事務局の記事では、独学で翻訳を学ぶことについて、「語学学習や資格取得など、何かを自分の力で習得した経験がある人は独学に向いている」ということが書かれています。

でも、私自身の学習経験と指導経験から正直な意見を言ってしまうと、「独学だけで実務翻訳者になる」のは、なかなか難しいと思います。

今回は、その理由を英日翻訳の観点から、ちょっと厳しめに、でも本音でお伝えしたいと思います。

英語が得意でも翻訳の仕事は難しい理由

まず前提として、翻訳の仕事は、英語が得意なだけでは務まりません。

「英検1級持ってます」とか「TOEIC900点超えました」とか、そういう人がトライアルに落ちてしまうのが翻訳の世界です。

なぜか?

それは、翻訳者の実力は、「訳文の質」で判断されるからです。

英文を読み取る力が優れていても、それを自然な日本語に訳せなければ評価されません。

当然ですよね。

英日翻訳者の商品は、英文読解力はなく、日本語に訳した文章だからです。

ですので、たとえ高学歴のネイティブと同じくらいの英語力を持っていたとしても、商品である日本語の文章が下手なら仕事はできません。

しかも厄介なことに、自分の日本語力を自分で客観的に評価するのは難しいため、独学では改善が難しいという性質があります。

以下に詳しく説明しますね。

自己流の訳し方・文章を抜け出せない

独学で翻訳を学ぶ人の多くが、最初につまずくポイントがこれです。

たとえば、翻訳をしていて(または文章を書いていて)、以下のような不安を感じたことはありませんか?

「これ、自然な日本語かな?」
「句読点の打ち方、これで合ってるかな?」
「原文に忠実すぎて、ぎこちなくなっていないかな?」
「意訳しすぎていないかな?」

こういう疑問に学習者が自分で答えるのは、なかなか困難です。

しかも、自分では「うまく訳せた」と思っていても、他人から見たら不自然な文章になっていたり、実務翻訳の観点から見たらダメだったりすることもあります。

独学でよくあるのが、自己流の訳し方・書き方が身についてしまい、翻訳の仕事では通じない訳文になってしまうケースです。

たとえば、長年にわたって会社員として文章を書いてきた人は、自己流(または勤め先の会社流)の書き方が身についていることがあります。

そうした場合、一般的な文章としては問題なくても、実務翻訳の仕事では通じない文章になっていることがあります。

実力が伸びているか自分では判断できない

独学には「自由」という大きなメリットがあります。

でもその裏には、「正しい方向に進めているか判断できない」という不安が常につきまといます。

翻訳の学習は、地味で孤独な作業の連続です。

調べて、書いて、直して、また直して…を繰り返すことになるので、最初のうちは楽しくても、2か月、3か月…と続けていくうちに、「これ、意味あるのかな?」「全然上達してる気がしない…」と感じ始めてしまいます。

そして、多くの人がこの時点で挫折してしまうのです。

独学でプロのレベルに到達するのは容易ではない

さて、ここまで読んで、

「それでも、独学で頑張ってみたい!」
「実力さえつけば、スクールに行かなくてもいいでしょ?」

と思っているあなたに、ひとつお伝えすることがあります。

翻訳者として本格的に仕事を得るには、「トライアル」というテストに合格しなければいけないということです。

トライアルというのは、翻訳会社が独自に実施している試験のことで、これに受かるとその会社の翻訳者として登録してもらえます。

そして、その会社から仕事を受注できる可能性が出てきます。

このトライアルは翻訳者への登竜門とも言えるもので、多くの人がここで挫折してしまいます。

当然ですが、学歴や職歴、資格が優れていても、あなたの作った訳文が翻訳会社の基準を満たしていなければ不合格になります。

どれだけ時間をかけても、どれだけ苦労して訳しても、品質が基準を満たしていなければ不合格。

ですので、翻訳スキルを証明するしか道がないのですが、独学でそのレベルまで達するのは容易なことではありません。

翻訳スクールがおすすめの理由

じゃあ、「スクールに行けば確実にプロになれるの?」というと、もちろんそれも保証はありません。

でも、スクールには独学では絶対に得られない3つの価値があります

  1. 添削でフィードバックがもらえる
     → 自分のクセや弱点に気づける
  2. 業界で求められるスキルを段階的に学べる
     → 書籍や会社勤めでは学べないスキルを学べる
  3. 仲間がいることでモチベーションが保てる
     → 孤独にならず継続しやすい

私も過去にスクールに行って学びました。
翻訳者である先生の添削を受けることで、自分の文章の癖を修正し、翻訳者にふさわしい訳し方を学ぶことができました。

もちろん、最低限の課題をこなすだけのような「受け身の態度」では十分なスキルは身につきません
受講中は全力で学ぶ必要があります。

しかし、書籍やウェブサイトでは学べないことを翻訳者の先生から学ぶことができたので、授業料の何倍もの価値があったと感じています。

こうした理由から、あなたが最短距離でプロを目指したいと考えているなら、スクールの価値を軽視するのはもったいないことです。

独学で目指せる人とは?

ここまで、独学についてかなり辛口でお話してきました。
でも、誤解してほしくないのは、独学を完全に否定しているわけではないということです。

独学でも翻訳者になれる人はいます。

  • しっかりしたフィードバックをもらえる人がいる
  • 自分の訳と模範訳を客観的に比較・分析できる
  • 翻訳の仕事に関連するスキルを自分で学べる
  • すでに顧客候補がいる

など、一定の条件を満たせる人なら独学でも道は開けるはずです。

私の知り合いには、企業で技術者の仕事をしながら独学で翻訳を学び、退職した後は、その会社から翻訳の依頼を受けている人がいます。

この人の場合は、強力なコネがあったことが強みになっていると言えます。

でも、上記のような条件に当てはまらないなら、スクールを活用した方が、最終的には時間もお金も節約できるはずです。

結局のところ、独学かスクールか?

「翻訳者になりたい!」と思う気持ちは、素晴らしいと思います。

でも、その夢を実現するためには、現実的な戦略と正しい努力の方向性が必要です

独学でも不可能ではありませんが、迷っているなら、まずはスクールの体験講座を受けてみるのもいいかもしれません。

翻訳者への道は、決してラクではありません。
でも、努力の仕方を間違えなければ道は開けます。

ですので、お金を節約した結果、時間を無駄にすることがないように、確実な道を選んで着実に前進することをおすすめします。

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